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真紀子の十八番 ~キャンディーソープのカラオケ事情~

♪ちゅ~るちゅ~る、ちゃう、ちゅ~る~、ちゅ~るちゅ~る、ちゃうちゅぅる~♪

赤羽のスナック、キャンディーソープのカウンターの中でママの真紀子は腰をくねらせ、歌っていた。

「おっ、ママ、欲しくなったか」

客の拓郎がスツールから立ち上がり、ツクツクボウシのように腰を振った。

「何、急に立ちあがってんの、たーさん」

「だからこれじゃ」

拓郎はますます激しく腰を振る。しかし、その様子は真紀子には伝わらない。小柄な拓郎のへそから下はカウンターにすっぽり隠れているからだ。

「何?」

真紀子はカウンターから身を乗り出して、拓郎の下半身を確認する。

「なんでキャットフードの歌に反応して、たーさんが腰ふってんのよ。意味わかんない。たちもしなくせに」

「くう~っ」

拓郎が涙をふくふりをして、スツールに座りなおす。その拓郎の肩をポンポンと優しくたたいて、野村が立ち上がる。

そして、拓郎と同様に天を突くように腰をふった。

「ふんっ、ふんっ」

二振りほどで息があがりはじめる。

その様子を見て、拓郎が言った。

「ノムさんはすごいのお。大柄じゃけえ、立ち上がったら腰がカウンターに隠れることもない。意外にモノも大きいし」

にやりと野村が笑い、腰を振り続けた。

「え、そうなんですか」

バイトの恵美子が反応する。

「馬鹿いってんじゃないわよ。嘘に決まってんでしょ」

「ほんとじゃ。ノムさんはこう見えて、なかなかのモノを・・・」

「たーさんが小さいだけでしょ」

拓郎が言葉に詰まる。

「そうなんですか?」

ここでも恵美子が反応する。

「エミちゃんは、股間の話に敏感じゃのお」

「やだあ、そんなことないです。私もカラオケ歌っちゃおう」

恵美子がマイクを探しはじめる。

「マイクならこっちにもあるよ」

「何馬鹿なこと言ってんの、ノムさん。腰なんか振り続けてないでさっさと座って」

カラオケから曲が流れはじめる。

恵美子は揺れるように踊り始めた。そして、歌いはじめる・・・

♪ちょおっと、どぉおしたのぉ~、なぁに、どぉしたのの~♪

「また、ミポリンのあれかい」

拓郎が顔をしかめる。

「ローザ、エミちゃんの十八番だからね」

狭いカウンター内で恵美子が器用に腰を揺らし、踊り歌う。

「ミポリンはあんなふうに腰を振ってたかな」

拓郎に聞かれた野村は何も言わず首をふった。腰を振り続けたせいで息があがっている。

「エミちゃん、まだ三十三だからねえ。それこそ、あっちがほしいのよ」

「おっ、ついに俺の出番か!」

「たーさん、立ち上がらなくていいから。糖尿の出番なんてないから」

息をやっと整えたばかりの野村が立ち上がりかける。

「ノムさん、あんたも違う。心臓止まっちゃうでしょ」

野村がゆっくりと腰を下ろす。

「女の三十三、いちばん欲しくなるころよねえ。女の盛りは男の盛りと十年ずれるからねえ」

「そんなもんかい」

拓郎が恵美子を見ながら言う。

「そんなもんなのよ」

「ま、いいや。ママ、久しぶりにママも歌ってくれよ。例の十八番。後ろから前からどうぞ~ってやつをよ」

「いいわよ。エミちゃん見てたら、私も歌いたくなってきた」

曲が続くにつれ、恵美子の踊りはますますおかしなことになっている。

「女芸人の黒沢みたいじゃ」

野村が目を細めていった。

「確かに」

真紀子が同意する。口数の少ない野村は、拓郎よりずっと鋭い。

♪なぁにぃ~、どうしたのおおお~♪

「私、畑中葉子ってほんとにすごいと思うんだよね。あんな歌、恥ずかしくて、私ならテレビでなんて歌えない」

「どうして、いいじゃねえか、セクシィーで」

拓郎が反論する。

「だって、あれって、あっちの穴でもオッケーよって歌でしょう?」

「何いってんだよ、ママ。あれは体位の話だよ。そっちの穴うんぬんってわけないよ」

「そうかなあ。勘違いする人いると思うけど」

「それはママがそっちの穴も使う人だからだよ」

「ちょっと待ってよ、たーさん。私、そっちはきれいなもんよ。外人じゃあるまいし。バックはバージンよ、バックバージン。」

「なんだ、えらそうに。それは俺も同じことよ。バックバージン」

「そりゃあ、男はそうだろうけど」

「でも、ママは男の穴を責めるのが好きなんだろう」

「そんなこと・・・若干あるけど」

「狂ってる」

「ちょっと、ノムさん。ぼつりとひどいこと言わないでくれる」

「そうだよなあ。俺たちの世代からしたら考えられねえよ、男の穴をチョメチョメするなんざ」

「ああ、そうですか。悪うござんしたね。あ、エミちゃんのローザが終わる。じゃ、次、私の番」

真紀子がカラオケに曲番をいれる。

♪さよならぁああ~♪

「ああ、すっきりした。ママも歌うの?」

恵美子が真紀子にマイクを渡す。

「うっ」

野村がうめき、腰をおさえた。そして、天を仰ぎ、恍惚の表情を浮かべる。

「代弁すると、ノムさんはそのマイクを自分の息子にみたてて・・・」

拓郎がフォローする。

「ああ、もうわかった、わかった、うるさい」

二人の様子を見て、野村がにやっとニヒルに笑った。

「なんなの、いったい」

変な客ばっかり。ま、ママの私が変だからか。

イントロがはじまり、真紀子が腰をグラインドするように大きく振りはじめる。

「こんな振り付けだったの?」

恵美子が拓郎に質問する。

「さあ」

♪後ろから前からどうぞぉっ~、後ろから前から、どうぞっ♪

真紀子が下半身を中心に激しく体をくねらせながら、歌唱する。

「哀れよねえ。女の四十三歳、一番欲しい頃ってゆーしね」

「おまえが言うな」

「なによ、たーさん。どーゆー意味?」

「わかんなきゃいいよ」

「変なの」

「ママの踊りとか歌い方って、ちょっと黒沢かずこに似てるよね。節回しとか」

「おまえが言うな」

「何よ、次はノムさん。意味わかんない」

♪いつでも抱きしめていいのぉ~♪

真紀子は泣きそうな顔で歌っている。

「みんな、哀れじゃのお」

野村はつぶやいて、にやりと笑った。

 

 

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