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勘違いさせる女、涼子(1)~「もちものがいいんですね」編~

先日、涼子は29歳になった。
やべ~。
涼子は焦っていた。
30までには結婚したいからだ。
このままでは間に合わない。


涼子の理想は、二三年はたっぷり付き合い、お互いのことをしっかり知ってから結婚することだった。
しかし、それはもうかなわない。
交際期間より30までに、を優先だ。

 

涼子は男に縁がないわけではない。
むしろアリアリだ。
もてる。
もてないはずはない。


白い肌、長く艶やかなさらさら髪、細いのに出るところは出ているナイスバディ。
しかし、ろくな男が寄ってこない。
おかしいな、ちゃんと真面目かどうかリサーチしてから会ってるのに。

 

涼子は男との出会いはすべて友人を通していた。
そのほうが安心だからだ。
自分で選んだら、ルックスに目がくらんだりして、ろくなことがない。


涼子は自分の男を見る目に自信がまったくない。
3人ほど、自分で選んだ男と付き合って失敗しているからだ。
マザコン、DV、浮気性。
どれもろくな男ではなかった。

 

今度こそ。
真美ちゃんが紹介してくれる今度の男は堅物の弁護士だそうだ。
45と少し年齢がいっているのは、仕事にかまけていたのと、男兄弟5人の中で育ってきて女性に対して苦手意識があるからということだった。

 

「いいかも。その人、けっこういいかも」
涼子はすぐに真美にOKを出した。
「私、堅いぐらいの不器用な人のほうがいい」
「どうして?」


真美の質問に涼子は即答した。

「だって、これまでの男の人ってすぐに手を出してきたんだもん。あんな人たちと結婚なんて考えられない」
「それは嫌だよねえ。涼子ちゃん、もてるのにほんとに男運ないんだねえ」
真美は同情的な暗い声を出してはいたが、その語尾はうれしそうにはねた。
やべえ。
真美はひやりとする。

しかし、涼子はそんなことには気づかない。
だって涼子はおおらかなO型だから。

 

「ほんとにねえ」
涼子はゆっくりとため息をついた。
色っぺえ。こんな女、すぐにやりたくなって当然だよ。
真美は涼子のこれまでの男にひそかに同情した。
しかし、涼子が男を必要以上に扇情してしまうのは、涼子のルックスや色気のせいだけではなくて・・・

 

弁護士の太郎は真美ちゃんの紹介通り、真面目で女性慣れしてない男だった。
いける、この男、いける。
涼子はひそかにガッツポーズをつくる。

 

ルックスは悪くない。
むしろ背が高くてかっこいい。
体もしまっているし、身に着けているスーツはセンスも素材も悪くない(さすが弁護士。金はあるようだ)。
あの眼鏡をもっと今風のもので、彼に似合うものに変えて、髪型も少しいじれば、女が振り返る男になるはずだ。

 

あったり~。真美ちゃん、ありがと~。
ちなみに太郎という名前は親が適当につけた名前だそうだ。
太郎は男兄弟が多い。
5人兄弟の4番目だそうだ。
男ばかり生まれるので、両親が名前を考えるのが嫌になったそうだ。
そういった男っぽいエピソードも涼子好みだった。

 

無骨で素敵・・・涼子は早くも膝が開きそうになる。
それはこれまでの交際で、すぐに男に求められることで癖づいてしまっているからだった。
しかし、涼子の理想は真面目な恋愛である。
なんならそういったことは結婚するまでなくてもいい。
すぐにやろうとする男イコール結婚までたどり着かない男と涼子の頭の中ではなっている。

 

会話はよどみなく進んだ。
女慣れしてないという太郎を涼子は微妙にリードした。
太郎は頭は悪くないので、それにうまくのった。


太郎は付き合うなら、年下の女がいいといっていたらしい。
はは~ん。
涼子は納得する。
太郎はリードされないと男女関係が進まないタイプなのに、従順な年下タイプばかりに目をつけてしまったために、この年まで独身なわけだ。

 

じゃあ、私で打ち止めにしてあ・げ・る。
堅い交際を掲げているわりに、これまでの経験が邪魔をしている涼子の思考はすっかり「やれる女」になっている。
自身は気づいていないが、それは太郎との出会いにおいてもしっかりマイナスに作用していく。

 

二人の話はよどみなく、かなり盛り上がった場面もあった。
初回としては十分だ。
「少し酔っちゃった」


酒の強い太郎につられて、涼子はワインを飲みすぎてしまった。
涼子はため息をついて、うつむいた。

自分の頬はしっかりバラ色に輝いているはずだ。
涼子は顔をあげて、太郎を見つめた。


瞳は見苦しくない程度に充血して、潤んでいるはずだ。
ねえ、何かを連想しない? 潤むって・・・
涼子は目の前の太郎に目で問いかける。
酔ったふりをしながら、実際にもしっかり酒に酔っている涼子は自分が男を煽っていることに気付かない。


真面目な交際をしたい、結婚に持ち込みたいと思っているのに、そのノウハウはゼロなのである。

太郎は女性経験は少ないが、性欲はめっぽう強い。
この年になっても、それはもてあますほどにある。


学生時代に陸上にうちこんだことが裏目に出たと本人は分析している。
色っぽい涼子を前に、太郎は何かを口にしなければと焦った。
自分の欲求をごまかしたかった。

 

「断捨離って流行ってるじゃないですか」
「ええ」
「してますか?」
「いいえ、私はあまり」
「私も全然捨てられなくて。とことん流行りにはのれないみたいです」
「いいじゃないですか」
「そうでしょうか」
「ええ。。。素敵です」
「え?」


「素敵です・・・もちものがいいんですね」
「え?」
「だから、もちものがいいんですね」

 

太郎は心臓をぐっとつかまれたような気がした。
目の前の女は瞳をうるませて、何を言ってるんだ。でも・・・


太郎は二人の間のテーブルをひっくり返して涼子を抱きしめたくなる。
その気持ちをなんとか抑え、太郎は言った。

「そろそろ出ましょうか」
「はい」
涼子はにこりと笑って立ち上がった。

 

「で、どうだったの? 太郎さん」
時間に遅れてきた真美は、そのことはひとことも謝らずに涼子に聞いた。
「う~ん、ちょっと・・・」
「ちょっとって?」
「なんか評判と違ったみたい」
「ん? どゆこと? 私が悪いみたいで気になるじゃない」
「そうじゃないんだけど・・・」

 

涼子は真美にあの晩のことを話す。
あの後、店を出ると太郎は涼子をラブホテル街に誘導した。
どうして。
涼子はとまどう。
そんな涼子の気持ちに気付かないのか、太郎は涼子の手をひいて、ホテルに入ろうとした。

涼子は「やめてください」とそれを拒否した。


「どうして? さっきは誘ってきたじゃないですか?」
「え? 私が?」
「その・・・もちものがいいって」


なんで断捨離の話がここで?
涼子は首をひねる。
涼子はモノを捨てられない太郎に、モノを大事にしてるんですね、という意味をこめてそう言ったのだった。
そう、涼子は言い間違いをしているのだ。

 

正しくは「ものもちがいいんですね」であり、「もちものがいいんですね」ではない。
それでは違う意味になってしまう。
このことに涼子はこの時点でもまだ全く気付いていない。

 

「ええ、いいなって思って」
太郎の顔が真っ赤に染まる。
「でも、服の上からはさすがにわからないと思うんですが・・・元気になってたわけでもないし・・・スーツはタックの入ってるものを選んでいるし、少しでも盛り上がりそうな場合は、下に競泳水着をはいて盛り上がらないように抑えて、細心の注意をしているし・・・」
太郎は普段の苦悩と努力を語る。


「だから、、、ええと、どうして知ってるんですか? 誰かに聞いたんですか?」
「え? 何を」

太郎がもじもじとしはじめる。
涼子から体を反らし、背を向ける。
まるで自分の股間部分を隠すかのように。


「だから、そのお・・・私のが大きいって・・・」

太郎のモノはたいそう大きかった。
仲間内で評判になるほどに。
学生の頃はデカ太郎とあだ名がついたほどだ。
それが太郎は恥ずかしくもあり誇らしくもあった。

 

唯一、太郎が結婚を考えた女は、太郎とはサイズが合わないと彼から離れていった。
男友達は男の勲章のような思い出だともちあげるが、太郎にとっては苦い思い出である。

 

涼子は目の前で挙動不審になりはじめた男をどう扱っていいのか、わからなかった。
とりあえず問いかけてみる。

「太郎さん。。。大きいんですか?」
「え、ええ、それは、その、まあ」

太郎はどぎまぎとして、眼鏡をいじりまくっている。


「どれぐらい?」
涼子の好奇心が鎌首をもたげる。
涼子はけっしてそっち方面の話題が嫌いなわけではないのだ。
ただ、真面目な交際を求めているだけで。


「どのぐらいって・・・その・・・20ぐらいは余裕で」
女子中学生が憧れの先輩に告白しているかのように、太郎がもじもじと答える。

 

そんなに?
涼子の頭の中で何かがスパークする。
真面目な交際なんてなんぼのもんじゃいっ!
涼子は真面目な交際を捨て、目の前の好奇心を選びとる。

 

「じゃあ、行きましょうか」
「え?」
「だから、ここに」


涼子は目の前のネオンで飾られた建物を見あげる。

それはまっすぐに空に向かって立ち上がり、伸びていた。


「あ・・・はいっ!」
太郎は再び涼子の手をひいた。

 

太郎は自己申告していたとおり、すばらしいモノをもっていた。
涼子が言った「もちものがいいんですね」は当たっていたのだ。

 

本人はいまだに言い間違いに気づいていない。
だから、涼子は太郎のことを性欲が強くて自制がきかない残念な人だと判断した。
あっちの相性は抜群だったが、結婚相手としてはふさわしくない。

しかし、あんなモノにはめったに出会えないのに・・・
涼子は今でも少し後悔している。

 

このように、涼子の理想的な恋愛、そして結婚を阻んでいるのは涼子自身なのである。
涼子の色気、無知、性欲、すべてが「真面目な恋愛」をぶち壊す方向に作用する。

 

「あ~あ、誰かいい人いないかな。真美ちゃん、またお願い」
涼子は真美に手を合わせる。
「え~、また~」

 

うんざりした声を出しながらも、真美は頭の中で検索をはじめる。
仲間内でも評判な真面目な男、堅い男。
その男たちをいとも簡単に涼子が崩していくのが楽しいのだ。

 

次は誰を送り込もうかな。
「仕方ないな~、まかせといて!」
真美は大きくもない胸を張る。

 

目の前の涼子がぱっと明るい笑顔になる。
こんな女、だれも我慢できないよな~。
真美は小さく苦笑いした。

 

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