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【無料小説】それでもまた恋をする 第12話

 月では女は美しさを求められる。もっとはっきりいえば、美しさしか求められない。よって女たちは、自分の美しさを極めること以外に興味をもたない。恋などしない、決して。美によってランク付けされた女たちは、ランクにしたがった男に嫁ぐのがルールだ。そのルールを破れば、女には大きな罰が下される。

 かぐや姫はそのルールをあっさりと破った。トップランクの美しさを持つ姫には、月の中枢組織で働く非常に位の高い男が夫としてあてがわれた。でも、姫は幸せにはなれなかった。

 男はずんぐりむっくりで、夜も姫を悦ばすことがなかった。関心は仕事にしかなく、姫への興味も薄かった。月によく居るタイプの退屈なエリート男だった。月の女たちの関心は結婚後も自分の美にしかないため、そんな男に疑問を持つ女はいなかった。しかし、姫はそうではなかった。

 姫は恋がしたかった。結婚後、姫が夢中になった男は官位は低いが、整った顔とたくましい体をもつ若者だった。男は姫に夫が与えられなかったもの、甘美な夜を何度も与えた。狂おしく姫を求め、何度も愛の言葉を口にした。姫は立場を忘れ、夢中になった。もうどうなっていい。何度もそう思った。そして、姫は地球へと流された。

 かぐや姫はベッドの上で寝返りをうち、白い天井を見つめた。また同じことしそうだな。そしたらまた地球に飛ばされないかな。でも、いったんは眠らされるから、どのみち帝にはもう会えないな。

 ちぇ~。つまんないなー。帝の息子とか孫とかかな、今度の対戦相手は。うまく巡り合えるとい~な~。同じ星に流されたらだけど。かぐや姫は大きなあくびをして、半身を起こし、地球を見下ろした。大きな丸窓から小さな光が見える。それは確かに美しい星だった、しかし、大きさや輝きの似たような星は周囲にいくつもある。離れるほど、地球は数多の星に紛れそうになる。

 かぐや姫はまばたきを忘れて地球を見つめた。白目に充血が広がる。

「帝・・」

 地球を凝視し、真っ赤に充血した姫の目から、大粒の涙が幾粒か零れる。それらはみるみるシーツに広がった。かぐや姫は再びベッドに倒れ込んだ。頬を撫でるシーツはいつまでも冷たい。帝の熱が早くも懐かしい。シーツから発する匂いは、帝が着物に焚き付けていた香の匂いに少しだけ似ていた。

「帝・・・」

 かぐや姫の閉じた右目から、一筋だけ、つっと涙が流れ落ちた。丸窓からは砂を撒いた後のように数多の星が見えた。それらの中から、地球を探し出すことは、もう不可能だった。

 

【終】